郵政民営化問題に関して読んだ本のメモ

反対派

・あすなろ村の惨劇 野村正樹著 郵研社 2005/06/02

正直読んでもしかたない本というか、つっこみどころ満載の本でした(^−^;

 ■民間がやれないことは行政がやればよい

 たしかにそうだが、やれるもの・やれない物の区別がここには示されていない。
 具体的に何がやれて何がやれないのか分からない。
 過去において行政がその特権を持ってしてもバブルを防止できず、なおかつバブルを破裂させた責任はいまだ取れていない。
 官の最大の問題は「責任の所在」が明らかにされないことである。
 薬害エイズの問題にしてもかなりうやむやになってしまった。
 さらに年金問題にしても厚生省がどれだけ無駄遣いしても、なんら重大な責任問題になっていない。
 ただし、この責任問題と民営化した際の問題点といえるのが、明治安田生命を始めとする不払い問題である。
 もし簡保などで不払い問題が発覚しても、過去においてだったら「郵政大臣」のクビが飛ぶだけで、その下の事務次官が責を問われるくらいだろう。
 実際指揮した人間はコロコロ変わっているという理由で、さかのぼって罪には問われないかもしれない。
 不払い問題は民間企業であり、安易な利潤を追求してしまった結果起こってしまったので、もしも保険部門が同様のことを起こさないとも限らない。
 しかし、不払いはその他大勢の保険会社では大小あるにしても無いところも存在するだろうから、即民営化=不正&利潤追求という図式をストレートに組み込むべきではないと思う。

 ■政府がこれほど熱望している郵政民営化を肝心の国民はどう思っているのか?
 
 賛成派の「郵政民営化 竹中平蔵著」でも書かれているがきわめて関心が低い。
 第一位は年金・福祉の問題である。

 ■郵政民営化が始まったあと、あすなろ村やA市などの多くの郵便局では、紙芝居に出てきたようなコンビニの営業やチケットの販売も始めた。

 本の中では始めた後失敗してしまい、郵便局そのものが破綻してしまったと書かれている。
 そして「以前、村にはコンビニなんてなかったのにいきなり出来ても利用する人がいるはずがない」と書かれている。
 だったら民営化したときに最初からコンビニエンスストアを開業するはずが無いのである。
 ただ、この民営化後のコンビニ営業は先例が無いわけではなく「国鉄」が民営化されたときに地方の駅で軒並みコンビニを開業したという経緯がある。
 しかし結果は惨敗で、現在でも残っているところはわずかではないだろうか?
 その惨敗の原因は「マーケティング不足」にある。
 元々利用客が少ない駅でコンビニを開設するのが無謀な挑戦であり、利用客が多い駅構内で「コンビニ」が出来たのは最近であることからも「キオスク」との絡みがあったのではないだろうか?

 ■せっかくお金が集まった金融機関も〜多くのお金がハゲタカファンドのエサになった。

 これも具体例が書かれていない。
 どうなってどうのようにしてハゲタカファンドの手に渡ったのかが分からない。

 ■この小判をぜんぶ手に入れられたら

 アメリカのハゲタカさんが日本の村の小判を狙う場面です。
 いかにもひどいように書かれていますが、かつて日本もバブルの時代にアメリカの不動産を買いあさっていた時期があったはずです。
 人のことは言えません。
 さらに、日本の企業がどれだけの利益を外国から吸い上げてきているのか全く理解出来ていないようです。

 ■民間会社には光と闇がある

 「闇の部分は弱い人ばかりにのしかかる」と書かれてあります。
 これは正論です。
 ただし行政予算のうち大部分の人間に使われるべき「公益」にどれだけのお金が使われているか理解する必要があります。
 洗い直してみれば「ある特定の人間」に使われている例が多々あるはずです。
 例えば「談合」などのように「特定の建設業者」などのように「地元企業だから」と役所ぐるみで税金を無駄遣いする例もあります。
 民営化したからのしかかるのではなく、元々使われるべきお金が使われていないかもしれないということも考慮しないといけないでしょう。
 

 ■「非採算部門の切り捨て」「規模の経済による効率化

 すでに郵政公社になる前から行われています。
 ゆうパックなどはバイトさんが運んでいますし、昔から年賀状はバイトさんが運んでいます。
 今更持ち出す問題でも無いでしょう。
 ここで問題なのは「特定業者による競争によって料金がつり上げられているのではないか?」という問題です。
 よく言われるのは郵政民営化反対派のドンと言われた国民新党綿貫民輔の選挙母体はトナミ運輸という会社です。
 このトナミ運輸郵政公社と提携している運輸会社としては全国一の取引量で、以前より癒着が問題となっていました。

 ■あったほうが便利ではなくて無ければ困るとの声が高い郵便局

 確かに離島などでは無ければ大変に困るでしょう。
 ただ「郵便局」という独立した建物で運営しなければいけないのか?という問題があります。
 銀行業務でしたら「ATM+テレビ電話」でも良い場合があります。
 保険業務でしたら集金だけですので週1〜隔週でも良いと思います。
 配達にしても、元々離島の人口の少ない地域に配達するのですから、送付・即配達で良いのではないでしょうか?

 ■関西では強大化したJRが弱者である私鉄の乗客を奪っていく

 ここまで来ると完全に論理破綻しています。
 以前から話している「民営化すると郵政は破綻する」という意見とまったく違った意見になってしまいました。

 ■岐阜市民に愛された名鉄線の路面電車・・・赤字を理由に当然のごとく廃止された

 これは闇の部分ですね。
 この件に関しては名鉄は岐阜路線に関してはなりふりかまわない切り捨てを行っています。
 しかし、ここまでに至った経緯も問題にすべきです。
 岐阜市名鉄との確執も考慮しないと、この問題は安易に「闇の部分」として片付けるのは尚早です。

 ■民営化された福知山線は、その「稼げ」の象徴だったのかもしれません。

 まったくその通りです。
 異論はありません。